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外資による小売業・卸売業への参入規制とその開放の見通し

エンベッド
(月刊 国際法務戦略 掲載)
中国ビジネス・ローの最新実務 Q & A
第28回
外資による小売業・卸売業への参入規制とその開放の見通し
黒田法律事務所 黒田 健二、黒須 克佳
Kenji Kuroda, Katsuyoshi Kurosu/Kuroda Law Offices
中国では、外国企業による小売業・卸売業への参入は従来、原則的に禁止されてきた。1992年
に公布、施行された「小売業の外資を利用する問題についての国務院の回答」により、外国企業
による小売業への参入は一定限度認められるようになったが、許可要件は非常に厳格であった。
また1999年6月に公布、施行された「外商投資商業企業施行弁法」により、要件が若干緩和さ
れ、また限定的ながら卸売業についても外国企業による参入が認められるようになった。しかし許
可要件はやはり厳格であり、今までに許可された件数は非常に限られており、卸売業に関しては
たった1社しか設立されていない。
もっともこれまで外国企業の参入に対する制限が非常に厳しかった小売業・卸売業の分野につい
ても中国のWTO加盟により大幅に開放される見通しである。
本連載では外商投資企業による卸売の問題については既に何度か触れたが、今回はWTO加盟
後1年未満という現状での外資による小売業・卸売業への参入規制に関する法制度及び実際の
状況について述べると共に、今後の開放の見通しについても検討することとする。
一
Q1
土地使用権の取得方法と割当土地使用権による現物出資
日本企業A社は、中国企業B社と合弁会社C社を設立しました。C社の主な経営範囲は、
時計の製造・販売であり、登録資本は1000万元です。C社では従来自社の生産工場で
製造された時計を日本及びその他の海外に輸出すると共に、中国国内市場向けにも販
売してきました。日本企業A社では、中国国内市場の拡大に伴いC社が直営する小売
店で、C社の製品と共に、A社の製品を小売販売したいと考えています。C社製品は低
価格品が多く、A社製品は高額品ですが高品質ですので、A社製品を共に店頭に陳列
することによりC社の直営店の品揃えを充実させることができ、相乗効果が得られると期
待しています。しかしC社の総経理からC社ではA社製品を小売販売することはできない、
と指摘されました。C社の総経理の指摘の通り、C社ではA社製品を小売販売することは
できないのでしょうか。
1
A1
C社の総経理の指摘は適切です。中国では、外国企業による小売業・卸売業への参入
は厳しく制限されており、合弁企業等の外商投資企業による中国国内の販売が認められ
るのは、原則として自社製品に限られます。一定の要件をみたす場合は、他社製品の小
売販売、卸売販売も許可されますが、合弁会社C社はその要件をみたす企業ではありま
せん。したがってC社の総経理の指摘の通り、C社はA社製品を小売販売することはでき
ません。
上記のQ&Aのケースのように外国企業が合弁企業を既に設立しており、合弁企業の製品とと
もに外国側合弁当事者の自社製品(合弁企業にとっては他社製品)についても合弁企業を経由し
て販売したい、つまり合弁企業を販売会社として機能させたいという要望はよくあることである。しか
し中国の現行の法制度上これは認められていない。冒頭で述べたように、中国では外国企業によ
る小売業・卸売業への参入は、原則的に禁止されているのである。例外については後述する。
筆者らは日常の業務の中で、このような要望、質問を頻繁に受ける。中には既に日本企業の
製品を合弁企業で販売してしまっているケースもある。なお上記のQ&Aのケースは小売販売につ
いてであるが、メーカーが小売業に参入するケースは少なく、実際には卸売販売を希望するケース
のほうが多い。
中国への外国企業による進出規模は年々拡大しているが、現状では外国企業が設立できる
現地法人は原則として生産型企業であり、中国が「世界の生産工場」と形容される所以の一つとな
っている。
もっとも外国企業による小売業・卸売業への参入規制の開放は長年、諸外国が要求しているこ
とである。そのため外資への小売業・卸売業の開放が中国のWTO加盟の条件になっており、近い
将来中国の法制度も改正される見込みである。この点については後述する。
二
Q2
小売業への参入要件
日本企業A社は日本国内で家具等の小売業を展開しており、年間売上高は500億円程
度、資産総額は約150億円です。A社では中国に合弁企業、あるいは100%外資企業
を設立して中国市場をターゲットとした店舗展開をしたいと考えています。現在かなり多
くの外国企業が中国で店舗を開店して営業しているようですが、他方中国では外国企業
による小売業への参入はかなり厳しく制限されているという話も聞きます。A社は中国に
100%外資企業、あるいは合弁企業を設立して小売業を行うことは可能でしょうか。
A2
現状では難しいと考えます。まず現在の中国の法律上、外国企業が中国で小売業を行う
には中国企業との合弁企業でなければなりません。またA社は年間売上高が500億円
程度、資産総額が約150億円とのことですが、小売合弁企業の外国側出資者の主な要
2
件として、申請前3年間の年間平均売上高が20億米ドル以上で、かつ申請1年前の資
産額が2億米ドル以上であることが必要とされますので、小売合弁企業の外国側出資者
となるには、A社は年間売上高、及び資産総額をこの要件の水準に高める必要がありま
す。
1.参入規制の経緯
上述のように、中国では外国企業による小売業への参入は、厳しく制限されてきた。
外国企業による小売業への参入については、1992年に公布、施行された「小売業の外資を
利用する問題についての国務院の回答」により、一定限度、認められるようになったが、許可要件
は非常に厳格であった。
この「小売業の外資を利用する問題についての国務院の回答」の主な内容は、以下のようなも
のである。
投資形態
・合弁企業または合作企業
・100%外資企業は認めない
経営範囲
・日用品の小売業務
・主な取扱商品は国産の一流品
(一定量の輸入品の取り扱いも認める)
・卸売及び輸出入代理業務は認めない
許可地域
・北京・上海・天津・広州・大連・青島及び5つの経済特区に限定
し、各地域に1つまたは2つの小売合弁(合作)企業を認める
年間輸入数量
・当該年度の小売販売総額の30%を超えない範囲
この「小売業の外資を利用する問題についての国務院の回答」により、ヤオハンの出資した第
一八佰伴有限公司をはじめとする数社の小売合弁企業の設立が許可された。
地方政府が申請を受け審査を行った後、最終的に国務院が許可するという手続になっていた
が、この「小売業の外資を利用する問題についての国務院の回答」の規定の許可条件が厳しく、
かつ手続が煩雑であったことから、地方政府の越権行為により当該規定に従わず、小売合弁企業
の設立を許可するという現象が生じた。このような刻文の規定に従わない小売合弁企業は、一時3
00社以上あり、そのうち65社は内資企業に転換され、あるいは事業を停止し、あるいは取り消され
ているが、2001年8月6日時点でまだ251社は事業を行っていた。
このように地方政府が越権許可した企業については、国務院により数回にわたり改善措置が
取られている。
2.外商投資商業企業施行弁法
3
1999年6月には、「外商投資商業企業施行弁法」が公布、施行され、これにより外国企業によ
る小売業への参入についての許可要件が若干緩和され、また限定的ながら卸売業についても外
国企業による参入が認められるようになった。
「外商投資商業企業施行弁法」は、依然として100%外資企業におる参入を全面的に禁止し、
かつ中国側出資者の出資比率は原則として51%以上であることを要求している。さらに設立を許
可する地域も限定している。また登録資本は小売業については5000万元以上(中西部地区につ
いては3000万元以上)とし、かつ出資者適格を厳しく制限するなどの条件を設けている。
ⅰ)許可要件
「外商投資商業企業試行弁法」の小売合弁企業に関する許可要件は以下の通りである。
【小売業の許可要件】
登録資本
・5000万元以上
(中西部地区は3000万元以上)
出資比率*
・(原則として)中国側出資比率51%以上
出資者適格
・申請前3年間の年間平均売上高20億米ドル以上、かつ申請
(外国企業側)
前1年間の資産額2億米ドル以上
出資者適格
・申請前1年間の資産額5000万元以上(中西部地区は3000
(中国企業側)
万元以上)、かつ商業企業の場合、申請前3年間の年間平均
売上高3億元以上(中西部地区は2億元以上)、対外貿易企
業の場合、申請前3年間の年平均自営輸出入額5000万米ド
ル以上(うち輸出額が3000万米ドル以上)
経営範囲
・小売販売(代理販売、委託販売を含む)
・国内製品の輸出業務
・自社商品の輸出入業務
・関係する付帯サービス
(商品輸出入代理業務は禁止されている。また年度商品輸入
総額は当該企業の当該年度商品売上高の30%未満に限られ
る)
許可地域
・省都、自治区首府、直轄市、計画単列市、経済特別区
(試験地区)
(1992年の国務院の規定よりも拡大されている)
経営期間
・30年以内(中西部地区は40年以内)
*出資比率:3店舗を超える支店チェーン経営方式をとる合営商業企業(注)(コンビニエンスストア、専業店、専門
店を除く)では、中国側の出資比率が51%を超えるものとするとされている。そのうち合営商業企業自身の経営
状態が比較的良好で、外国側出資者が既に国内で大量の製品を仕入れており、かつ外国側出資者の国際営
業販売網を利用して国内製品の輸出を一層拡大できるような合営チェーン商業企業は、国務院の許可を得れ
4
ば、外国側出資者がマジョリティとなることができる。
3店舗以下の支店(3店舗を含む)を開設する合営商業企業及びチェーン経営方式のコ
ンビニエンスストア、専業店、専門店では、中国側出資者の出資比率は35%を下回ってはな
らない。
ⅱ)設立手続
「外商投資商業企業施行弁法」によると小売合弁企業の設立手続は以下の通りである
(卸売合弁企業も同じ)。
(1)中国側出資者が所在試験地区の経済貿易委員会(経済委員会、計画・経済委
員会、以下同じ)にフィージビリティ・スタディ報告書(項目建議書に代わるもの)と
関係書類を提出し、試験地区の経済貿易委員会は国内貿易主管部門と合同で、
所定の手続に従って国家経済貿易委員会に届け出る。国家経済貿易委員会は
対外貿易経済合作部に意見を求めた後、審査許可する。
(2)フィージビリティ・スタディ報告書(項目建議書に代わるもの)が許可された後、試
験地区の対外経済貿易部門が所定の手続に従って、対外貿易経済合作部に契
約書、定款を提出し、対外貿易経済合作部は契約書、定款を審査許可する。
(3)設立許可を受けた合営商業企業は、許可証書を受け取った日から1ヶ月以内に、
対外貿易経済合作部が交付した「外商投資企業許可証書」をもとに、国家工商行
政管理部門で登記手続を行う。
ⅲ)提出書類
また小売合弁企業の設立を申請する際には、以下の書類の提出を要求される(卸売合弁
企業も同じ)。
①フィージビリティ・スタディ申請、提出書類
(1)合弁当事者が共同で作成したフィージビリティ・スタディ報告(項目建議書に代わ
るもの)
(2)合弁各当事者の銀行資産信用証明、登記登録証明(コピー)、法定代表者証明
(コピー)
(3)合弁額当事者の会計事務所の審査した最近3年の年度貸借対照表及び損益計
算書
(4)(中方合弁当事者が国有資産をもって投資する場合は)中方が投資する国有資
産の評価報告についての国有資産管理部門の確認書類
(5)設立予定の合営商業企業が取扱う商品の種類
(6)その他の関連書類
5
②契約、定款申請、提出書類
(1)フィージビリティ・スタディ申請、提出書類及びその許可書類
(2)合弁各当事者の授権代表者が署名した設立予定の合営商業企業の契約書、定
款
(3)輸出入商品目録
(4)設立予定の合営商業企業の董事会構成員リスト及び合弁各当事者の董事委任
派遣書
(5)国家工商行政管理局が発行した企業名称事前許可通知書
(6)その他の関連書類
以上の書類は、コピーと注意書きされたもの以外は全て、正本を提出しなければならない
ものとされている。
三
Q3
卸売業への参入要件
日本企業A社は、衣服等のメーカーで、年間売上高は1000億円程度、資産総額は約2
00億円です。数年前に中国企業B社との合弁企業C社を設立し、中国にて衣服を製造
し販売してきましたが、同時にA社の日本国内の工場でも衣服を製造しており、一部中
国にも輸出しています。A社では、中国国内市場の拡大に併せてA社製の商品の中国
向け販売を拡大するために、新たに中国に100%外資企業、または合弁企業を設立し
てA社製の商品の販売会社としたいと考えています。このようなことは可能でしょうか。
A3
現状では難しいと考えます。まず現在の中国の法律上、外国企業が中国で卸売業を行う
には中国企業との合弁企業でなければなりません。またA社は年間売上高が1000億円
程度、資産総額が約200億円とのことですが、卸売合弁企業の外国側出資者の主な要
件として、申請前3年間の年間平均売上高が25億米ドル以上で、かつ申請前1年間の
資産額が3億米ドル以上であることが必要とされますので、卸売合弁企業の外国側出資
者となるには、A社は年間売上高、及び資産総額をこの要件の水準に高める必要があり
ます。
外国企業による卸売業に参入については、上述の通り1999年6月の「外商投資商業企業施
行弁法」の公布、施行により、限定的ながら認められるようになった。
「外商投資商業企業試行弁法」は、小売業と同様に100%外資企業による参入を全面的に禁
止し、かつ中国側出資者の出資比率は原則として51%以上であることを要求している。さらに設立
6
を許可する地域も限定している。また登録資本は、卸売業については8000万元(中西部地区に
ついては6000万元)とするなどの厳しい条件を設けている。
この弁法に基づいて初めて設立が許可された外商投資の卸売企業が、丸紅と上海一百(集
団)有限公司との合弁による上海百紅商業貿易有限公司(2001年8月)である。もっとも許可要件
はやはり厳格なので、今までに許可された卸売合弁企業はたった1社だけである。
「外商投資商業企業試行弁法」の卸売合弁企業に関する許可要件は以下の通りである。
【卸売業の許可要件】
登録資本
・8000万元以上
(中西部地区は6000万元以上)
出資比率*
・中国側出資比率51%以上
(小売を兼業する場合も同じ)
出資者適格
・申請前3年間の年間平均売上高25億米ドル以上、かつ申請
(外国企業側)
前1年間の資産額3億米ドル以上
出資者適格
・申請前1年間の資産額5000万元以上
(中国企業側)
(中西部地区は3000万元以上)、かつ商業企業の場合、申
請前3年間の年間平均売上高3億元以上(中西部地区は2
億元以上)、対外貿易企業の場合、申請前3年間の年平均
自営輸出入額5000万米ドル以上(うち輸出額が3000万米
ドル以上)
経営範囲
・国内商品及び自社輸入商品の国内卸売
・国内製品輸出
(商品輸出入代理業務は禁止されている。また年度商品輸入
総額は当該企業の当該年度商品売上高の30%未満に限られ
る)
許可地域
・省都、自治区首府、直轄市、計画単列市、経済特別区
(1992年の国務院の規定よりも拡大されている)
経営期間
・30年以内(中西部地区は40年以内)
「外商投資商業企業試行弁法」による卸売合弁企業の設立手続、及び設立申請の際の提出
書類は小売合弁企業の場合と同じである。
四
今後の見通し
7
Q4
中国はWTO加盟に伴い、外国企業による卸売業への参入を開放する見通しであるとの
情報を得ましたが、許可条件や時期に関する情報はありません。当社としては、小売業・
卸売業に対する規制がなくなれば、当社の日本製の製品を中国で販売展開するための
販売会社として新たに合弁企業、または100%外資企業を設立したいと考えています。
中国ではこのような合弁企業、または100%外資企業の設立はいつ頃可能になるのでし
ょうか。
A4
今のところ新たな関連の法律・法規は、制定されておらず、この小売業・卸売業の分野が
今後どのように開放されていくか、またどの程度開放されるかについてはまったく不明で
す。もっともWTO加盟後2、3年以内に米中合意の内容に近い形で徐々に自由化される
見通しです。
中国は既にWTOに加盟したので、これまで制限が著しく厳しかった小売業・卸売業の分野に
ついても外資に対して大幅に開放される見通しである。しかし、今のところ新たな関連の法律・法規
は、制定されておらず、この分野が如何に開放されるか、開放の程度がどれぐらいであるかについ
ては不明である。
もっとも、WTO加盟の最終条件の基礎となった米中合意の内容に近い形でまとまることが予
想されている。米中合意では、小売業についてはWTO加盟後2年以内に外国企業がマジョリティ
となることを認め、3年以内に原則として参入制限を解除することなどが盛り込まれている。また卸
売業についてはWTO加盟後2年以内に地理的制限、数的制限を撤廃するとされ、さらには3年以
内にやはり原則として参入制限を解除するとされている。
米中合意の小売業・卸売業に関する内容によると以下のように制限が徐々に撤廃されることが
予想される。
小売業
WTO加盟後2年以内
外国企業がマジョリティとなることに対する制限は解除される。
但し地理的制限・数的制限はある。
また以下の物品は取り扱うことができない。
・製薬品、殺虫剤、マルチングフィルム、精製油
・化学肥料
WTO加盟後3年以内
原則として参入制限は解除される。
100%外資が認められる。
地理的制限・数的制限は解除される。
取扱物品に関する制限も原則として解除される。
ただし化学肥料は取り扱うことができない(WTO加盟後5年以内
に制限は解除される)などの例外がある。
8
卸売業
WTO加盟後1年以内
中国企業:外国企業=50:50の出資も認められる。
但し地理的制限・数的制限はある。
また以下の物品は取り扱うことができない。
・塩、たばこ
・書籍、新聞、雑誌、医薬品、殺虫剤、マルチングフィルム
・化学肥料、精製油、原油
WTO加盟後2年以内
地理的制限・数的制限は解除される。
WTO加盟後3年以内
原則として参入制限は解除される。
ただし化学肥料は取り扱うことができない(WTO加盟後5年以内
に制限は解除される)などの例外がある。
注
外商投資商業企業試行弁法第2条は、外国の会社、企業が中国の会社、企業と中国国内に設立する中外合弁または合作商業
企業を「合営商業企業」と定義している。本稿で取り上げる小売合弁企業、卸売合弁企業は共に合営商業企業である。
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