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論文

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2P01
第29回日本道路会議
スマートフォンを活用した路面段差観測手法と
東北地方太平洋沖地震後の路面段差分布の調査結果
災害時交通流監視システム研究会 ○八木浩一
1.はじめに
地震災害時に路面段差など道路状況を即座に把握、共有することは迅速な復旧復興活動にとって重要である。これ
まで人手や手間のかかる目視確認、あるいはプロフィルメータなど特別な機器を用いて行われてきた。本稿では、従
来手法 1)2)よりも手軽でかつ定量的な観測手法として、スマートフォンを自動車のダッシュボード上に置き通常通り走
行するだけで路面段差が観測できる手法を提案する。さらに 2011/3/11 に発生した東北地方太平洋沖地震後の路面段差
の分布状況の調査を本手法により実施したので、その結果もあわせて報告する。
i
2.路面段差観測手法
Z ( j)
この手法は、車両の上下方向変位量を上下方向加速度の二重積分により推定
j =i - N +1
・・・(式 1)
し、隣接する極大点と極小点の変位量の差を段差高と定義し推定するものであ dZ (i ) = Z (i) N
る。さらにその間の進行方向の移動距離を段差長として定義し、これを GPS 測
位データから推定する。加速度を単純に二重積分すると重力や登坂時の上昇速 Vz (i ) = Vz (i - 1) + dZ (i )
・・・(式 2)
N
度、センサのヒステリシス特性、計算上の丸め誤差などにより値が発散し実用
i+ N
に耐えない。そこで次のようにステップごとに補正をかけながら積分する。
Vz ( j )
ステップ1:観測された加速度から静加速度成分を除去する。観測周期を
j
i
N
=
+1
・・・(式 3)
N[Hz]、i 番目に観測された上下方向加速度を Z(i)[m/s2]とする。Z(i)に含まれる重 dVz (i) = Vz (i ) 2N
力加速度など静加速度成分は上下方向変位量に影響しない。そこで直前1秒間
の上下方向加速度の平均を静加速度成分とみなして減じ、動加速度成分 Lz (i) = Lz (i - 1) + dVz (i)
・・・(式 4)
N
dZ(i)[m/s2]を式1で求める。
さらにdZ(i)を和分することで上下方向速度Vz(i)[m/s]
H (i 2) = Lz (i2 ) - Lz (i1 )
・・・(式 5)
を式2で求める。
ステップ2:この速度から登坂時の上昇速度のような段差に起因し
ない成分を除去する。直前直後の1秒ずつ(計2秒間)の上下方向速
度の平均を静的な速度成分とみなして減じ、動的な上下方向速度
dVz(i)[m/s]を式3で求める。さらに dVz(i)を和分することで、上下方向
変位量 Lz(i)[m]を式4で求める。
ステップ3:段差高 H[m]と段差長 L[m]を求める。上下方向変位量
Lz(i)が i=i1 で極値となり、その直後の i=i2 で再び極値となったとき、段
差高 H(i2)を式5で定義する。段差長 L[m]は、極値と極値の間に移動し
た距離を GPS 測位データから求める。
図-1に一般道での走行実験結果を示す。これは同じ場所を5回走
図-1 上下方向加速度、速度、変位量
行した際のデータである。この道路はほぼ東西に向いていたことから
横軸には経度を取り、縦軸には補正された上下方向の加速度 dZ(i)、速度 Vz(i)、変位量 Lz(i)を取っている。上下方向変
位量 Lz のプロファイルが安定して得られたことから、段差高と段差長は一定の信頼度を持っていると確認できた。段
差位置に±0.00003 度(±3[m])程度のずれが見られるが、要因として GPS の測定誤差などが考えられる。
å
å
3.東北地方太平洋沖地震後の路面段差分布の調査結果
計9日間の現地調査を 2011/4/2~4(岩手)
、4/9~10(宮城、福島)
、4/17(茨城)
、5/6~8(山形、秋田)の4回に分
けて実施した。観測地域は、北は青森県八戸市、南は茨城県水戸市、西は国道 13 号線、国道 121 号線の沿線、東は沿
岸部までで、南北 450km、東西 120km にわたる範囲、延べ走行距離は約 4600km である。
第29回日本道路会議
東北地方全体の段差高と頻度の分布を表した図を図-2に示す。この図では走行 1km ごとに求めた段差高平方和を
青丸の直径で示している。また 2011/3/11 の本震時の震央の位置を赤丸で示している。さらに、地域ごとの特徴を示す
ため、1次メッシュ(約 80km 四方)単位に、横軸を走行 1km ごとの段差高平方和、縦軸を段差数とした図を作成し、
地図の周りに示している。東京メッシュの図にプロットが密な範囲の上限を示す赤線を目視で引き、比較のためにこ
れを他のメッシュにも示した。東北地方を全体的に見ると、震央より南側に、より多くの段差があり、特にいわき市
を中心に郡山、白河、水戸にかけて多くの段差があることがわかる。1次メッシュごとに見ると、震央より南側の沿
岸部に位置する福島、いわき、水戸メッシュでは赤線右側の範囲に多くのプロットが見られ、大きな段差が多く存在
していることがわかる。仙台メッシュでも同様の傾向が見られる。また震央より北側の沿岸部に位置する気仙沼、宮
古、久慈のメッシュでは赤線上側の範囲に多くのプロットが見られ、小さな段差が多く存在していることがわかる。
石巻、日光メッシュでも同様の傾向が見られる。内陸部に位置する仙北、湯沢、会津若松、佐野メッシュでは東京と
同程度の段差分布であった。
図-2 東北地方太平洋沖地震後の路面段差分布の調査結果(調査期間:2011/4/2~5/8)
4.おわりに
本手法により、非常に広い範囲の被災状況を短い期間で調査できた。その一方、今回の調査では課題も発見された。
頻度は低いが、段差高が高く段差長が数 m~十数 m のゆるやかに変化するスロープ状の道路形状において、ほとんど
体感しなかったのに検出される場合があった。逆に段差高が低い突起状の道路形状においては、体感したのに検出さ
れない場合があった。加速度またはその変化量である躍度の大きさから段差の存在を判断しつつ大きさを推定するな
ど、さらなる改良が必要と思われる。今回の調査は地震発生から3週間後~2ヶ月後の実施となったが、このような
手法が普及することで地震後の被災状況がより速やかに把握され、復旧復興活動の更なる迅速化につながることを期
待している。
参考文献
1) 福原敏彦ほか:IRI を用いた廉価な道路維持管理手法の為の測定器開発、第27回日本道路会議
2) YAGI koichi, Extensional smartphone probe for road bump detection, 17th ITS world congress Busan 2010,
http://traffic-hazard.ddo.jp/xoops/modules/wfdownloads/singlefile.php?cid=2&lid=32, 2010
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