close

ログイン

パスワードの再発行?

OpenIDでログイン

「天気予報いまむかし (気象ブックス022)」 - 日本気象学会

エンベッドダウンロード
「天気予報いまむかし
(気象ブックス022)」
股野宏志 著
成山堂書店,2008年10月
194頁,1800円(本体価格)
ISBN 978-4-425-55211-5
天気予報に関する非常に興味深くかつユニークな本
目次を一見して かるように,本書では天気予報を
文化・学問・技術の3つの側面から論じている.本書
の執筆の視点について著者は「はじめに」において,
以下のように述べている.
「天気予報の自由化は“天気予報のユビキタス化”
である.…ユビキタス天気予報の時代で最も大切なこ
とは,予報を作る側と予報を利用する側が天気のイ
メージを共有することである.
」
が出版された.著者の股野氏は,気象庁において長年
「文芸作家が科学者にも劣らぬ洞察力で自然に対す
予報業務に携わられた天気予報のエキスパートであ
るイメージを作品に残している.…素朴に大気の底で
る.さらに,本書にも述べられているが,天気予報開
生活を営んだ天気俚
始の契機となった有名な黒海の嵐について,ルヴェリ
して抱いたイメージは現代人にも共感できる貴重な無
エの天気図(連続図)を復元され,その経緯を「天
形文化遺産と言える.
」
気」や「測候時報」に執筆されている.本気象ブック
の時代の先人が気象と天気に対
「天気予報の文化的側面を天気俚
の時代に
って
スシリーズでは,「気象と音楽と詩」(気象ブックス
序章とし,本論では天気予報の学問的背景と技術的側
005)を執筆され,さらには,CD を出版されるなど,
面に見られる人間の知性の結晶と言える気象と天気に
多彩な活動を行っておられる.本書も期待にたがわ
対するイメージについて述べることにした.
」
ず,興味深い内容に溢れており,評者は多くの新知識
を本書から得ることが出来た.
先ず,本書の目次を示すと,以下のようになってい
る.
また,
「おわりに」において著者は,
「時の流れの底
には大気の流れが営む気象に対する人間の鋭い感性と
知性が一貫して流れている.この感性と知性を現代の
人々に生活情報として親しまれている天気予報の文化
第1章
天気予報の文化的側面
1 暦(こよみ)と聖(ひじり)と日和見(ひよりみ)
2 空の気色(けしき)と気(け)
3 気象
4 気象学
5
観気象学
6 気象と通信のクロスオーバー(電信気象学)
:ル
ヴェリエの功績
第2章
天気予報の学問的背景
的側面・学問的背景・技術的側面からお伝えしたいと
思って筆を執った.
」
このような著者の執筆のモチベーションは本書の随
所に遺憾なく発揮されている.
第1章では気象学にとどまらず,日本文学等の多方
面の著者の該博な知識に基づいた,数多くの気象に関
する事項について含蓄のある説明が展開され,一つ一
つの事項を表す言葉に存在する過去からの歴 的重み
が感じ取られる.評者などはこの章で実に多くのこと
1 気象学の課題
を教えられた.また,気象観測や 観気象学の歴 的
2 大気物理学
な背景の説明,ルヴェリエの業績と電信気象学につい
3 大気力学
ての説明などは,著者の得意とする 野であり,著者
4 気象力学
の筆は気象学の歴 の時空を逍遥し,達意の文章を紡
5
ぎだしている.
観気象学の力学化
6 数値予報
7 天気予報は気象学のシンデレラ
第3章
天気予報の技術的側面
第2章では天気予報の学問的な基礎を,物理学的な
観点から述べるとともに,数値予報の黎明期から関係
してきた著者ならではの数値予報に関する歴 的叙述
1 観測技術
が興味深い.今年は数値予報開始から50年の節目の年
2 通信技術
であり,このような叙述を読むと感慨深いものがあ
3 予報技術
る.
第4章
情報通信時代の天気予報(情報通信気象学)
第3章では,天気予報を支える技術的な側面につい
て,観測技術,通信技術,予報技術のそれぞれについ
Ⓒ 2009 日本気象学会
2009年 5月
て,その発展が簡潔にまとめられている.気象業務の
93
406
中枢において,気象庁の国内気象監視計画(NWW )
に参画された著者の面目躍如といったところである.
第4章は近年の天気予報について情報通信気象学と
と締めくくっている.
学生の理科離れが言われて久しいが,今一度著者の
言葉を嚙みしめる必要がある.
いう切り口でその展望を述べている.そのなかで著者
いずれの章の内容も興味深く,評者などは目からう
は,
「読み書きソロバン天気予報」という言葉で,
「教
ろこの箇所が数多くあった.また,随所にちりばめら
育とマスコミを介しての天気予報は防災情報としても
れているコラムも,豊富な話題を提供して非常に興味
大きな役割を果たし,その結果,…気象災害は大幅に
深い.
減少した.
」
「義務教育の教科に天気予報が含まれている意義は
非常に大きい.
」
「現代の人々は義務教育で天気予報を日常の社会生
天気予報についてトータルに理解したいと思われて
いる方,特に気象予報士の方々にとってはまことに興
味のつきない本である.一読をお勧めする.
(
(財)日本気象協会 藤谷徳之助)
活に最も必要な事柄として学んでいるのである.」
94
〝天気" 56.5.
Document
カテゴリー
RELIGION
本日のアクセス数
7
ファイルサイズ
153 KB
タグ
1/--ページ
報告