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CANシステムは こう設計する - CQ出版社

エンベッド
第5章
CANシステムは
こう設計する
設計データ
―― 車載機器にもトップダウン設計の考えかた
がたいせつ
佐藤道夫
ここでは,車載用通信プロトコルCAN を採用したシステムを開発する方法について説明する.実際のCAN コントローラLSI
を例にとって,送受信の構造や割り込み,同期/再同期のとりかたなどを解説する.
車載用としてエレクトロニクス技術が導入されたのは,ヘ
ッド・ライトを点灯させるための発電機(オルタネータ)の
(編集部)
まり,自動車向けエレクトロニクス産業は,信頼性と品質
の面で最良の製品を提供する必要があります.
制御を行ったときでした.これが自動車内で電気エネルギ
を使用できるようになった最初です.そして 1970 年代に自
●制御アーキテクチャは集中方式から分散方式へ
動車の排気ガス規制が始まり,クリーンな排気ガスを実現
このような自動車の高機能化,インテリジェント化にと
する必要がでてきました.点火のタイミングとガソリンの
もなって,自動車は多くの ECU(電子制御ユニット)を搭
噴射量を制御するため,エンジン制御にマイコン(マイクロ
載するようになりました.そして,ECU の回路が複雑にな
コントローラ)が搭載されました.その後マイコンは,安全
り,配線量が増え,それに伴ってワイヤ・ハーネスの種類
注1
制御システム や車体エレクトロニクス(body electronics)
と量が増加しています.例えば,現在,車体重量の 5 ∼
注2
10 %をワイヤ・ハーネスが占めるとも言われています.
でも利用されています.今後は,無線技術に新機能を付
加したテレマティクス(コンピュータとワイヤレス通信を
組み合わせた技術)機器などへの搭載が予想されます.
この増加の要因は,制御アーキテクチャにあると考えら
れます.マイコン導入初期のころは,数個の制御対象(バ
ここで,車載用半導体の特徴を表 1 に示します.自動車
ルブやモータ)を一つのECU で制御していました.その後,
は,民生機器やコンピュータと異なり,戸外で使用され,
マイコンの性能の向上や価格の低下などによって,一つの
どこにでも移動できます.つまり,車載用半導体では使用
ECU で制御する対象が増加しました.マイコンのI/O の増
される環境がどのように変わったとしても,確実に動作す
加は,ワイヤ・ハーネスの種類や本数を増加させます.こ
ることを保証しなければなりません.さらに,QS9000 規
のような制御アーキテクチャは「集中制御方式」と呼ばれて
格の厳しい認証プロセスに合致しなければなりません.つ
おり,現在の主流となっています.
現在,自動車のグレードによって違いはありますが,1
台当たり 10 ∼ 60 個の ECU が搭載されています 注 3.今後
も,自動車の内装や外装の充実に伴って,この増加傾向は
〔表 1〕車載用半導体の特徴
生産期間
開発サイクル
認 証
使用温度範囲
市場故障率
標準化の傾向
52
民生機器/コンピュータ
約3年
6 ∼ 9 ヵ月
ISO9000
0 ℃∼ 70 ℃
100ppm 未満
高い
Design Wave Magazine 2002 December
自動車
約 20 年
1.5 年∼ 3 年
QS9000
− 40 ℃∼ 125 ℃
1ppm 未満
低い
続いていくものと予想されます.そこで,この問題を解決
注 1 : ABS/ESP のシャーシ制御,およびエア・バッグ制御.
注 2 :自動車のエアコン,ウィンドウ,ドア, シート,インテリア照明,コ
ックピットなど.
注 3 :ECU の数量×ワイヤ・ハーネスの本数(1ECU 当たりの平均本数)=
全体のワイヤ・ハーネスの量
組み込み制御
マルチメディア
25M
D2B, MOST
オプティカル・リング
通信速度
(bps)
10M
〔図 1〕
主な車載向けネットワーク・プロトコル
FlexRay, Byteflight
時間駆動
フォールト・トレラント
2×2ワイヤ/オプティカル
1M
Bluetooth
ワイヤレス
CAN-C
事象駆動
2ワイヤ
125K
20K
現在,自動車市場に受け入れられている代表的なネットワー
ク・プロトコルを図に示す.これらのうち,筆者ら(モトロ
ーラ)は LIN,CAN,FlexRay,J1850 をサポートしている.
するため,どのような制御方式が最適なのかが模索され始
めています.
CAN-B
事象駆動
フォールト・トレラント
2ワイヤ
LIN
マスタ/スレーブ
シングル・ワイヤ・バス
水晶発振子必要なし
J1850
0.5
1
2.5
5
コスト
米国の自動車技術団体であるSAE(Society of Automotive
Engineers)は,自動車内のネットワークを以下のような三
その解決策の一つが「分散制御方式」です.そして,この
つのクラスに分けています.
分散制御方式の中核的な技術がネットワーク技術です.し
>クラス A 通信:高速 CAN
かし,このような新しい技術を導入する場合,以下のよう
>クラスB 通信: SAE J1850,低速フォールト・トレラン
なことが求められます.
>自動車の信頼性,堅ろう性,柔軟性の向上につながること
ト CAN
5
>クラス C 通信: LIN
>劣悪な環境でも確実に通信できること
>自動車内のネットワークとその通信プロトコルが標準化
1.CANシステムを開発すための基礎知識
されること(図 1)
この車載ネットワーク・プロトコルの一つである CAN
ここでは,いくつかの例を示しながら,実際に CAN シ
( Controller Area Network)は , 1980 年 代 に ド イ ツ の
ステムをどのように開発するのか解説したいと思います.
Robert Bosch 社によって提唱されました(その後,ISO
11898 として標準化された).最初は欧州の代表的な自動車
●ドアや計測器の制御に応用
メーカが使い始め,続いて多くの欧州のメーカが搭載しま
図 2 にドア・システムを示します.このドア・システム
した.現在では,米国や日本の自動車メーカも搭載し始め
は,サイド・ミラーの X-Y の位置調整やミラーの格納(フ
ています.今のところ,車載ネットワーク・プロトコルの
ォルド),ドア・ロック,ウィンドウ・リフトといった機
中でデファクト・スタンダードと呼べるものはこの CAN
能を備えています.
だけと言っても過言ではないでしょう.
1998 年 10 月,欧州の自動車メーカを中心とした LIN
コンソーシアム
注4
この例では,ユーザ(ドライバ)が与えるスイッチの情報
が別のノードから CAN バスを通じてこのノードに送られ
によって, LIN( Local Interconnect
ます.このドア・システムのノードは,送られてきたフレ
Network)プロトコルが提唱されました.LIN は基本的に
ームの ID を解釈し,そのデータをもとに,例えばミラー
CAN のサブバスと位置付けられ,
「CAN のノードより安価
の位置調整(左右,上下に動かす)を行います.このように
に構成できる」というコンセプトをもとに作られています.
して,ドライバはサイド・ミラーをベスト・ポジションに
筆者らは,このLIN を導入することによってECU のプラッ
固定します.またこのポジションをメモリに格納しておき,
トホーム化が促進されるものと考えています.一方,車載
ネットワークにも高速化の波が押し寄せてきています.2000
年には,CAN の上位に位置する「FlexRay プロトコル」が
FlexRay コンソーシアム注 5 によって提唱されています.
注 4 :このときのコンソーシアムのメンバは,Audi 社,BMW 社,Daimler
Chrysler 社,Motorola 社,Volcano Communications Technologies
社,Volkswargen 社,Volvo 社である.
注 5 :このときのコンソーシアムのメンバは,BMW 社,Bosch 社,Daimler
Chrysler 社,General Motors 社,Motorola 社,Philips 社である.
Design Wave Magazine 2002 December
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